へたなんよ
「たんけん!本のまち」とは
子育て中の親たちが、新しい本との出会いにつながるような特集や、おすすめしたい子どもの本の感想をご紹介しています
あらすじ・感想・おすすめポイント
へたなんよ
文:ひこ・田中
絵:はまの ゆか
出版社:光村教育図書
ありのままがいとおしい。気持ちがやさしくなるおばあちゃんの絵本「へたなんよ」
早いもので、もう9月も半ばですね。
敬老の日も近づいてきました。
今回はかわいいおばあちゃんの絵本をご紹介します。
どんな絵本?
おばあちゃんにはへたなことがいっぱい。
耳が遠くて電話で聞くのがへただし、針の糸通しもへた。
覚えるのもへただし、歩くのもへた。
孫のネネは毎日そんなおばあちゃんのお手伝いをします。
「ネネはじょうずやねえ」
「ネネはたよりになるねえ」
「へたなんよ」と笑って、周りに手伝ってもらうおばあちゃん。
そんなおばあちゃんに、ネネは小学校の様子を話します。
「わたしにもへたなことあるよ。ボールを取るのがこわいねん」
ボールを取るのはワタルくんが上手。それを言うとワタルくんは照れくさそうに頭をかくよ。
「クレヨンをにぎるのもへたやねん」
クレヨンはアスミちゃんが上手。それを伝えると笑ってくれたよ。
「ネネの歌声がきれいね」
アスミちゃんに褒められて、恥ずかしかった話も。
自分のこともお友達のことも、自然に受け止めるネネは楽しそう。
ネネの会話の端々に、いつもありのままを認めてくれるおばあちゃんの存在を感じます。
ネネの心を育てたのは、きっと、おばあちゃん。
このおばあちゃん、「へたなんよ」と笑う笑顔がかわいいんです。
ありのままの自分を受け入れて、周りをほっこり和ませてくれる。
私は初めてこの絵本を読んだとき、
「あぁ、ネネはこんなふうに育てられたからこんな心が育つんだ」とすごく腑に落ちて、思わず涙が出てきました。
“できないことは恥ずかしいことじゃないよ”
”そのままで大好きだよ”
おばあちゃんからネネがいつも受け取っているメッセージ。
言葉にしなくてもネネはいつもそれを感じていて、だから素直に自分の短所も相手の長所も認められるんだなと。
「自己肯定感が大事」「多様性が大事」とは言うけれど、そう思える子どもの心を作れるのは、きっとこのお話に出てくるおばあちゃんのような存在なんだと感じました。
日常生活では何かを達成することばかりに目がいって、うまくいかなくてモヤモヤすることもありますよね。
そんなときに、親子でぜひ読んでみてください。
おばあちゃんとネネがお互いをぎゅーっとしている姿を見ると、大切なものを思い出させてくれるような、やさしい気持ちになれますよ。
この記事を書いたブックガイド
ことり絵本堂 笹原ゆう
3歳の息子と小学生の娘の母。
家のソファや階段に腰かけて、子どもと絵本を読む時間が好き。
お気に入りの絵本や気付きのあった絵本を中心にご紹介しています。